今回の作業はトヨタ スープラ(JZA70)のエンジン始動不良の点検・修理作業です。以前夏頃にエアコンの修理で御来店・修理をさせて頂いたお客様でして今回は冷感時は何とかセルモーターが回りエンジン始動するがチョイ乗りを繰り返すとエンジンが「クイッ」と言うだけで始動しなくなる事が有ると言う事で連絡を頂き、点検する事になりました。一旦お車をお預かりして症状の確認をしてみました所、軽快にセルモーターが回る感じではなくセルモーターの回転が遅い感じ(バッテリーが弱いのかな?と言う感じの回り方)でエンジンが始動しました。バッテリーは今年の夏頃交換済みと伺っていましたのでオルタネーターの発電関係・アース関係・セルモーター本体を点検して行きます。
セルモーターの取り付け位置を確認した所エンジンルーム内助手席側ミッションケースあたりを覗き込むと上段右画像位置にセルモーターが有りました。まずバッテリー自体の点検をします。バッテリーテスターを使用してエンジンを始動していない状態のバッテリー電圧を確認すると約12.7V位は有ります。エンジンを始動する際にどれ位電圧が落ちるのかをテストしてみますと約11V付近でしたのでバッテリーが悪い訳では無さそうです。次にエンジンを始動してオルタネーターの充電電圧を見てみますと約14.7V付近有り画像には無いですがこのテスターで負荷をかけ充電電流(A)と電圧の確認をした所充電系統には全くの異常は無しでしたので、各アースの緩み等が無いかチェックして行き各アース関係も異常は有りませんでしたのでセルモーターを取外して分解点検する事にしました。
セルモーターを外す際は必ずバッテリーのマイナスターミナル側を取外してから作業します。セルモーター本体を取外す際、セルモーターにはバッテリーからのメインケーブル(プラス信号)が接続されていてこのケーブルを取外す際工具やケーブルのターミナル部がボディ等アース部分と接触するとショートしてしまい大変危険ですので 必ず取外して安全を確保する様にして下さい。取り外し中の画像は撮れませんでした・・・スイマセン(^^;。固定は14mmのボルト2本とMT端子(バッテリーからのメインケーブル)を固定している12ミリのナットを取り外し、始動スイッチからのリード線を接続している1Pカプラーを取外してからケガなどに注意して取外して下さい。
早速分解して行きます。まずこのセルモーターはC端子(ヨークから出ているフィールドコイルのリード)を固定している12ミリのナット部分に保護カバーが付いていましたので上方へ引き上げカバーを取り外します。カバーを取外したら12ミリのナットを緩め取り外しC端子リードを外します。エンドカバーとブラシホルダーを固定しているビス2本を取り外しエンドカバーとドライブハウジングを固定しているスルーボルト2本を取り外しエンドカバーを取外して行きます。すると、中段画像の様にブラシが磨耗していっぱいの粉が付着しまくっています。この状態では接触抵抗も出るしブラシが極端に磨耗しているに間違いは有りません。磨耗したブラシの粉を取除きブラシを確認してみると下段画像の様に全体的にブラシ自体が磨耗していますが一ヶ所だけが極端に磨耗しているのが分かりますでしょうか?今回の症状の原因はここに間違い有りません。
アーマチュアやヨークやピニオンギヤ・オーバーランニングクラッチ・エンドカバー内のメタルなど点検しましたが特に悪い所は無さそうで、消耗品のブラシ&ブラシホルダーとスイッチASSYとオーバーホールで行けそうです。今回のセルモーターもプラネタリ式のセルモーターでした(^^)。
お客様に診断結果を連絡し本体修理では無くリビルト品に交換する事になりましたので早速注文をしました。
今回は簡単な故障診断(あくまでも簡易ですが、不具合現象)を説明したいと思います。
☆スターター回らない(マグネットスイッチの作動音も無し)
バッテリー不良?(比重等点検)
スタータースイッチ回路の接触不良等
マグネットスイッチ不良
☆スターター回らない(マグネットスイッチの作動音は有り)
バッテリー不良?(比重等点検)
始動回路系の接触不良
マグネットスイッチ接点接触不良
モーター部のレヤショートやブラシの磨耗
☆スターター回転遅い
マグネットスイッチ接点不良
モーター部のレヤショートやブラシの磨耗
☆スターターは回るがエンジンをクランキングできない(エンジンが始動しない)
ピニオンギヤとリングギヤが噛み合わない
オーバーランニングクラッチのすべり
☆異音
ピニオンギヤやリングギヤの歯先磨耗による噛みあわせ不良
ピニオンギヤのしゅう動不良
☆異臭や煙等が出る場合
スタータースイッチの戻り不良
マグネットスイッチのコイルのレヤショートによるピニオン離脱不能状態
など症状によって似ている症状や全く違う症状など色々有ります。もちろんスターターとは関係が無く違う箇所の不具合によりセルモーター不良と良く似た症状になる事も有りますので、上記はあくまでも御参考程度にして下さいね~(^^)。
セルモーターのリビルト品が届きましたので早速組み付けをして作動テストを行いますと、「キュキュブ~ン」と絶好調にエンジンの始動が行なえる様になりました。年の為もう一度充電電圧のチェックと各取り外し部の増し締めチェック・各電気廻りのチェックを行い作業は無事に終了致しました(^^)!!。
お客様に作動確認をして頂き「あっ、全然違う」と良くなった状態を確認して頂き喜んで頂けました(^^)!!。
有難うございました!!
by まっちょ